アイ・ドール

それは明らかにおかしな気象現象だった――。



白く彼女が佇み、星達が煌めいている空から降りる雪――月明かりに反応し、淡白く発光しながら舞い降りてくる――――。



嬉しいのか、彼女は自身の輝きを増して私を見下ろす――。



間違いなく彼女には表情がある――。




真綿――いや、「わたあめ」の如く甘く舞う雪――――それをいとおしく見守る「彼女」――月――――。





「そう――――それが、あなたの望みなのね――――」



私は、彼女の意思を読み解いた――。




笑っている――――。



柔らかく、優しくもあり、しかし何処か意味あり気に、惑わす様に笑っている――――。




鳴り響いていた偽人達の叫び、アイドールの歌声が、彼女を見つめている時間に比例して、徐々に耳元から離れてゆく――――。




締まる空気――――。



伝わる冷気――――。





「ふわふわ――ふわふわ――ふわり――ふわり――――」





「――――私って――嫌な女なのかしら――――」




「無意味ね――――」


輝きを更に増し、諭す彼女――――。

< 380 / 410 >

この作品をシェア

pagetop