スピン☆オフ
ここで尚吾を選ばない事が、あたしの愛の証拠で。


これしか尚吾を守る手段が思いつかない。


それが、幸せになれるって事だから。


選ばない勇気も必要なんだって…。


「オレには、意味がわかんねぇ。」


イラついてる空気が体に巻きついて重たい。


「尚吾があたしを守ってくれるように、あたしも尚吾を守りたいから。」


「何から守るんだよ?!」


「全てから…。これ以上、大事な人を失いたくなんかない。」


「オレは簡単に死なねぇし。」


「……あたしは、何かあるたびに不安になる。今日だって、お兄ちゃんが尚吾に何かしたのかって不安で仕方なかった…。あたしは、泣き虫で臆病者だから。」


「確かに、泣き虫で臆病者だな。」


呆れたような口調だけど、落ちてくる涙を優しく拭ってくれる。


「あたしの事が本当に好きだったら…ミュウと付き合って下さい。」


深く深く頭を下げた。


---グイッ!!


両手で力強く深く下げた頭を尚吾が持ち上げた。


怒っているはずなのに…。


涙でグチャグチャで…。


生クリームの甘さが消えて、しょっぱいはずなのに…。



----甘い甘いキスだった。


いつものキスじゃない。


そこには、ゆっくりとした時間が流れているかのよう。


今まで、こんなキスを尚吾はした事がないのに。


背筋が甘く疼いていくような。


唇から温もりを感じて、あたしの舌を優しく包み込んでくれる。


ぎゅっと胸が張り裂けるような切なさが込み上げてきた。


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