夫婦ごっこ
切ない片想い
どこにいたのか言い訳を考えて自転車をしまっていると
声が聞こえて来た。


「ほっとけないんだって。」


車から出て来たのは 前さん夫婦。
買い物袋を出しながら 話している。

「俺の性格 わかるだろ?」

「わかるけど……だけど深入りしすぎじゃないの?
線を越えてると思うけど。」

「超えてたら千鶴には言わないよ。」

千鶴さんの持っていた荷物も 前さんはとりあげて
二つづつ荷物を両手に持っていた。

  逞しいわ……

恒くんなら あんな風なことはしないな。
前さんの優しいとこって ほんとああいうとこなんだ。


「今夜は俺が作ってあげるから 千鶴はゆっくり
風呂にでもつかってろ。」


そう言って大股で楽しそうに歩いて行く。
その後を千鶴さんが身軽について行く。


「いいな…前さんは…優しくて。」

二人の会話の内容は理解できなかったけど
前さんの愛に千鶴さんは包まれていて
すごくうらやましいと思った。


  私は今日 何をつくろうかな

恒くんと私

もっともっと近づけないかな……。
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