夫婦ごっこ
しばらくして恒くんが入って来た。

恒くんは無言で静かにベットの脇に座った。

「痛むか?」

恒くんがやっと声を出した。

「うん……痛い……からだじゅうが筋肉痛のひどいやつ。
特に…足が痛いの……。」

「足も…折れてるからな。
無理するなよ。」

「折れてるの?退院まだまだできない?」

「できないよ。大人しくしてろ。」


そう言った恒くんの体が震えだした


「ごめん…俺のせいで…こんなことになって…。
俺がもう少し優しかったら……
紅波にこんな痛い目に合わせることもなかったんだ。」


私は恒くんが泣いているのに驚いて

「恒くんのせいじゃないよ……。
私がずるい子だから神様が罰を与えたんだよ。」

そう言った。


「俺は…仕事やプライドにかまけて紅波のこと
知ろうともしなかった。
食事が美味しくても美味しいって言わなかった
友達がいない土地で…ずっと籠の鳥にしていても
何一つ声もかけてやらなくて……
ホントごめん…。」


まさか恒くんに謝られるなんて


「恒くんのせいなんかじゃないから……。」

そう言うのがやっとだった。
< 268 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop