夫婦ごっこ
複雑な思いで父に手を引かれたバージンロード


「うわ めっちゃキレイ…。」
そんな声がして嬉しかった。
今まで 目立ったこともなかったし……キレイだなんて
言われたこともなかった。

花嫁は魔法をかけられているんだと思った。

父から恒くんにバトンタッチして
やっと緊張から解放された。

「キレイだな。紅波。」耳元で囁いた。

うれしくて頬が赤くなる。
恒くんの言葉ひとつで…私はこんなに嬉しくなるのは
きっと今 結婚式っていうイベントの中だからなのかな。


私の親族席にはあまり人はいなかったけど
後は 恒くんの大学の友人や会社関係の人たちが
たくさん出席してくれた。

前さん夫婦の顔もあった。


千鶴さんは体の線がくっきりとした黒いワンピースに
ボレロをはおって 髪の毛をアップにしていた。

大人の女性って感じ……。
いつもの千鶴さんとは 全然違って赤い口紅がセクシーだった。

  私の今日の敵といったら千鶴さんかな…。


神父さんの言葉はよく見かけたドラマと同じだった。

昨日

「誓いのキスは額にするね。」恒くんが言った。
私もそこはけっこう気になっていたから

「うん。」と答えいてた。
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