まだ、君を愛してる.doc
有くんとえりがタクシーに乗るまでを見届けてから、僕は愛花に聞いた。
「何したいとかってある?」
「うーん、別に。」
「別にか・・・。じゃ、僕の行きたいところ言ってもいいかな?」
「あ、うん。」
「良かった。ここからなら、十分も歩けば着くから。」
僕たちの向かった先は少し小高い丘のようになっている場所。漫画なんかだと裏山と称されるような場所。そのてっぺんに、僕たちは向かった。
「なんか、急に暗くなるね。」
「そうだね。でも、街が明るすぎるのかもね。ほら、一応、街灯もあるし。」
「本当だ。」
僕が指差す先を見て、それが急に、まるで蜃気楼のように現れたような、そんな虚を突かれた顔をした。
「その顔、本当に気がつかなかったんだね。」
「あ、うん。わりとこう言うの気づかないもんなんだね。あっ。」
「どうしたの?!」
急に彼女が声をあげるものだから、僕は驚き、彼女の側に寄った。
「ごめん、ちょっと転けちゃったみたい。ははは・・・」
「うーん、やっぱり暗いのかな?はい。」
自分でも驚くくらいだった。それくらいに自然に、さもそうするのが当然のように、僕は手を差し出した。
「あ、ありがとう。」
「ずっとこうしてたらいいよ。ここら辺よく知ってるから、だから、この方が安心だよ。」
「う、うん。」
はじめて握った彼女の手のひらは、このまま握り続けたら壊れちゃうんじゃないかと思えるほど、華奢で、そして柔らかかった。
「もうすぐだよ。」
バイクが入って来られないようにと、入り口に柵がある。その柵を越えると、光が瞬き、僕と彼女をその中に埋めるかのように包んだ。
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