【完】キミがいた夏〜Four years later〜



そう言ったその人は愉快そうに俺を見て笑ったけれど
俺は一瞬それが誰だか分からずに扉を開けたまま立ち尽くしていた



上品に着こなされた着物は西陣の帯が印象的だった



綺麗に結われた髪



いつか美鈴が借りて来た『極妻』から飛び出して来たような出で立ち



俺も曲がりなりにも呉服屋の息子だ



それが昨日今日着た、身のこなしではないことぐらいはわかる




「またアサミ?」



俺に向かってそう言ったぽってりとした唇と、その隣のホクロを見てやっとその人物の正体に気付いた



「…ママ!?」


「他に誰がいるって言うの?」



そして今度は呆れたような顔をして笑う



夜の女はわからない…



前の印象と180度変わってしまうんだから



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