ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「何かナツ、すっげーいい匂いする」

 俺はナツの胸に顔を埋めて、鼻から息を吸った。


 勿論ナツは元々いい匂いだけど、そのナツの匂いに混じって、あまーいバニラのような匂いが分かる。


「あ……朝ご飯にフレンチトースト焼こうと思って、準備してたの。その匂いかな……?」


「へー……フレンチトーストか。楽しみ」

 って言っても、今の俺はこの状態でいるだけでお腹いっぱいになれそうだ。


「だったら……旬。今から焼くから、ちゃんと起きて着替えてね」

 ナツはそっと俺の腕を解いて体を起こした。


 俺はそんなナツを見上げて、思わず息を呑んだ。

 ナツが、昨日までよりすごくきれいになってた。


「旬? 分かった?」

 ナツがそっと俺の顔を触った。

「う……うん。分かった」

 俺はただ頷いた。


 ナツは、優しく微笑んで、台所に戻っていった。



 何!? 今日のナツ!?

 いや、ナツはいっつも可愛くてきれいでセクシーだけど!


 でも今日のナツは、いつもの三割増で可愛くて、いつもの六割増できれいで、いつもの九割増でセクシーだった。(当社比)


 何でだろう……昨夜のナツを見たから? 俺にそう見えるだけ?


 でもそれでもいいや。

 俺だけが、ナツのすっげーいいところ見れるんだから。



 ナツは、フレンチトーストと、ココアを用意してくれた。ココアは、わざわざ昨日買っておいてくれたらしい。


「いただきまーす」

 俺はフォークを手に取って、フレンチトーストを口に運んだ。


「んまい!」

 甘い味が口に広がって、幸せな気分も大きくなる。


「旬って、本当何でも美味しそうに食べるわよね」


「だって、本当に美味いもん」


 でも、今日は格別かもしれない。


 昨日の最後にナツを見て、今日の朝一番にナツを見て、それで一緒にご飯(ていうかパンだけど)食べて……

 幸せだ。たったこれだけで、すごく幸せだ。

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