美加、時空を越えて
50人程の兵士と戦い、倒した。
遠くのほうから「引け、引け」という声が聞こえる。
切られた人たちが苦しそうな息をしていた。
「地獄絵だ」そう呟いた時、後ろから切りつけられそうになった。

気配を感じて後ろに飛びのき、蹴り上げながら顎にダメ-ジを与えると
(無念だ)
どうしようもない感情が流れて来た。

(こんな戦い……、意味がない……)
あちらこちらの倒れた兵士から、無念さと悲しみがわきあがって来ていた。
死んでいく恐怖と、後に残された者たちへの未練の中で、苦しみうごめくのが見て取れた。
呪いと憎しみ、恐れの負の念が、渦巻いていた。

茫然とその場に立ち尽くしていると、ガシッと不意に腕をつかまれた。
大きく力強いこの場から一歩も逃さないという不屈の手を感じた。
この戦の大将である武将自らの手だった。

武将、それが美加の過去生だった。
他の兵士たちは、決して殺し合いを望んでいなかった。
しかし、この武将だけは戦いを心から楽しんでいたのだ。
それが美加にとって理解できず、憎んでもいた。
まずこんな人が自分だとは思いたくはない。
私の魂は一体何をしていた?
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