パラドックスガール
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「お兄ちゃんっ、学校まで乗せてって!」


あたしは、カバンを階下に投げリボンのフックを止めながら、階段をかけ降りながら玄関の扉を半分開けたスーツ姿の兄を呼ぶ。
階段を降りながらだと、なかなかフックが止まらない。
振り返った兄は、酷く嫌そうな顔をしていた。


「残念でした、俺の愛車は俺専用です。」


「遅刻するんだってばっ。"愛しのエリー"ならすぐでしょ?」


「嫌ったらいーや。」


一階に着き、放り投げたカバンを拾いながら必死に訴えてみたが、兄は「いーっ」と白い歯を見せながらそう言ってドアを押し、車庫でヘルメットを被ってバイクに跨った。

兄の愛車の黒いバイク、"愛しのエリー"。

あたしがローファーを履き家から出るのを待っていたのか、目が合うと、兄はにやっと嫌な笑みをこちらに向け、キーを回しエンジンをふかした。
あたしはあまりの爆音に目と耳を塞いだ。


「じゃーな!」


その隙をついて兄は行ってしまった。


「あーっ!」


あたしは耳を塞いだまま叫んで地団太を踏んだ。
右手を振りながら去っていくバイクがかなり憎らしい。


「くそっ、また逃げられた。」


あたしは舌打ちしながら悪態をつく。
きっとあいつはサイドミラーであたしの様子を見て爆笑しているに違いない。





「…茗子、僕は完全に無視?」



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