パラドックスガール
.








圭吾が羨ましい。
ポジションが違うとしても、茗子に好きだと言ってもらえる。
僕は言ってもらえないから。

教室、自分の席に座り、体を椅子の背もたれに預けた。


「……はぁ」


右手を目の高さまで持ち上げる。
さっき茗子が触れた、僕の右手。
彼女の触れた自分の右手に、そっと唇を押し付けた。




[茗子は僕の。]



そんなの嘘だよ。
彼女は彼女のもの。
ただそう願ってるだけ。


そうやって口にすることで、自分に言い聞かせてるだけ。


気丈な弱さを持ってるのは、きっと僕のほう。
こうやって、茗子が男の名前呼ぶたびに反応して、取られたくなくて子供みたいなことをする。






大切すぎて、すごく怖いんだ。







「茗子…」






どうか今囁いた君の名前だけは、僕のものでいて。








To be continue...



.
< 65 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop