穢れなき雪の下で
「――で、そこに今から乗り込んで、一騒ぎするつもり?
 営業妨害だよ」

「子どもじゃあるまいし。
 騒ぎになんてならないわよ。
 イチロー、オーバーなんだから」

一瞬足を止めて肩を竦めてみせるミユだが、その瞳はちっとも笑ってない。


「すべて知っててその店に行くこと自体、大人げないだろ?」

「――だって、そもそも向こうが悪いんだから少しくらいおとなげなくったっていいじゃない。
 だいたい――」


だって、――か。

俺はミユの言葉に耳を傾けるのをやめた。

ミユの言葉に「だって」が出てくるともう、その暴走を止められない。
彼女の耳に、俺の言葉が届かなくなったサインのようなものだ。
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