あくまで天使です。


「………はい?」


「だからとっととこれ抜くの手伝えっつってんだよウスノロ!」


暴言とともに男の血管が膨れあがる。私の短い短気袋もプチンっと切れた。


「ウスノロって何よ!人に頼む言い方がそれ!?」


「あぁん?ノロい奴にノロいって言って何がわりぃんだよっ!」


私の機嫌パラメーターがかくんっと悪いほうへと傾いた。目の前で悶えている男を、キッと睨みつけこう言ってやった。


「なんで私がノロいって知ってんのよ!初対面のくせしてっ!」


「見た目で分かんだろ?いかにも亀並みに遅そうじゃねぇか」


男はぐいぐいと自前の翅を引っ張っている。まったく暴言を吐いたことを悔いていないようだ。それがさらに癇に障る。


「あー!何よ何よ!もう手伝ってあげないっ!」


あほらしくなってきて、私は学生かばんを肩にかけなおし、大股でその場から立ち去ろうとした。



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