あくまで天使です。


アリエルが口の中でもごもごぼやくと、月明かりが一層強くなった。


まずアリエルの足がすぅと消えていき、やがてだれもいなくなった。


今度はべリアルの膝が灯に包まれる。月明かりは彼を美しく、妖艶に照らしている。


「べリアル!」


無意識のうちに彼の名前を叫んでいた。


すると彼はゆっくり振り向き、私を黒い瞳で見つめてきた。


肩の辺りまで光に包まれると、いつもの人を小馬鹿にした笑顔を浮かべた。


かすかに動く唇。


その意味を完全にとらえきった時、一枚の羽しか残っていなかった。


私はだれもいなくなった部屋で、泣きながら微笑した。



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