カエルと魔女の花嫁探し
「セレネーさん、この方はきっと学者さんですよ。東の国はあらゆる物事を知りたいと、国を挙げて研究に力を入れて、男女問わずで学者が大勢いるという話を聞いた事があります」

「なるほどね、そう考えれば彼女の行動も理解できるわ。……でも、ずーっと森で探索してるみたいだから、クリスタルで見てるだけじゃあ、どんな人なのか分からないわね。ちょっと話しかけてみるわ」

 言い終わらない内に、セレネーはホウキの柄を下へ向ける。

 ――ギュンッ、とホウキは急降下し、ノートに書きこんでいる最中の女の隣へつけた。
 突然の登場に驚くと思いきや、女はノートを取ることに必死で、まったくセレネーに気付かなかった。

「こんにちは、お嬢さん」

 セレネーが話しかけてようやくこちらに気づき、女は顔を上げた。

「はい、こんにちはー……わあ! そのホウキにローブ、貴女はもしかして魔女様?」

「そうよ、アタシはセレネー。よろしく」

「嬉しい! 初めて魔女様に会えたわ。あ、私はキラと言います。王立研究所の生物学専門で研究してるんです。魔女様は知の象徴ですから、私たちの国では尊敬すべき人なんですよ。ああ、本当に嬉しい」

 そう言ってキラは両手を組み、赤みがかった瞳を輝かせてこちらを見る。
 好意的に見てくれるのは嬉しいが、こんな眼差しを向けられるのは滅多にない。様なんて付けられると恥ずかしくなってくる。

 セレネーが思わず立ち去りたい衝動に駆られていると、フードに隠れていたカエルが肩に登ってくる気配を感じた。

(相手を近くで見たいのは分かるけど、まだ早いわ!)

 ただのカエルを喜んで受け入れる人間なんて、普通は考えられない。ジーナの時のように特典をつけなければ、嫌がられるのは目に見えている。

 咄嗟にセレネーは肩のゴミを払うように見せかけ、カエルの頭を叩く。
 するとカエルが体勢を崩してしまい、セレネーとキラの前に、ピョーンと飛び出してしまった。
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