珈琲時間
12/14「好み」
 彼に彼女のことを聞いてみましょう。

 「あなたにとって、彼女はどんな存在ですか?」

 「茜? うーん。エスプレッソってとこかな。美味いんだけど、たまに苦いとことか、ちょっとしか味わえないところとか」

 それでは、彼女に彼のことを聞いてみましょう。

 「あなたにとって、彼はどんな存在ですか?」

 「俊行? えーっと……あ! ミルクティv カップじゃなくて、ボールのやつね。たくさん飲めて、甘くて、あったかいの」

 それでは、お二人に質問です。

 「そんなこの二人の関係とは??」

 「「友達です」」

 ほどよくクーラーの入った喫茶店。
 その奥に、この二人は座っています。
 彼、俊行くんの前には、苦い苦いエスプレッソが、彼女、茜ちゃんの前には、甘い甘いミルクティが置かれています。
 「……この前の店の方がおいしいな」
 「ええー? あたしはこっちの方が好きv ちゃんとボールで出てくるし、紅茶の味がしっかりでてるし」
 この二人、とある喫茶店で隣り合ったときに、意気投合してカフェ巡りのお友達になったのです。
 二人が会うのは、新しいカフェをどちらかが見つけたとき。
 そこで、俊行くんがエスプレッソを、茜ちゃんはミルクティを頼み、数時間だけのお友達の世界が始まります。

 「ここ、ずっと入ってみたかったんだよねぇ。この前彼氏に行ったら、コーヒー飲めないし、甘いもの嫌いだからって断られちゃってさ」
 自分はお酒飲めないあたしのことバーによく連れて行くくせに、酷いと思わない?
 そう彼女が言えば、
 「俺はお酒も嫌いじゃないから、なんとも言えないけど……。茜を連れて行く場所じゃないよな」
 あ、でも彼女はよく俺も連れて行くよ? それに、出来ればカフェにも連れてきたいと思う。
 と、彼が言います。
 「つまり、自分の女はテイトリーに入れたがるのよね。男って」
 「入って欲しくない部分も確かにあるけどね」
 「こうやって、あたしとデートしてることとか?」
 「友達と、デートの下見するくらい、多目に見てもらわないと」

 どうやら、この二人。本当に友達のようです。
 お互い彼氏も彼女も居るようですし。

 ……でも、本当にこのままだと思います?
 自分の好きな飲み物を相手に例えるくらい相手を思っているのに。
 ねぇ?

●友達同士だという二人に聴いたという雑誌の特集で、いろいろ面白い答えがあったので。こんな二人もいるのかなぁと。
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