Happy☆婚活
『桜井さん、お客様が見えているわよ。』
社員の臼井さんだ。
 『はいっ今、参りますっ。』
臼井さんはベテランの女社員さん。一昔前の言葉を借りるとキャリアウーマンだ。ちなみに臼井さんも独身の37歳。見た目はとても美人なのにどうして独身なのか、新菜には理解できない。きっと仕事が楽しくて恋愛には興味ないのかな。。ここの社員ならお金にも不自由しないだろうし。。新菜の妄想が膨らむ。
 新菜は慌ててパソコンの画面を婚活スケジュールから役員スケジュールへ切り替える。婚活パーティーにいっているなんてばれたら大変だ。決してプライベートな事をネットで調べてることに後ろめたいのではない。‘婚活パーティーに行っていること’がばれるのが恥ずかしいのだ。

 『失礼いたします。』
冷たく冷えた緑茶をおしぼりと共にお盆に乗せて応接室に入ると見知らぬ男が座っている。“誰だっけ・・。”
『大変お待たせいたしました。』
 とりあえず男の前にお茶とおしぼりを置く。
 『朝早くから申し訳ありません。私こういうものでして・・。今お使いのコピー機はいかがですか。うちの複合機は他社に比べてサービスを充実させておりまして。』
男は間髪入れずに話だし、大量のパンフレットを並べだした。
‘はっ営業だ。しかもこんな朝はやくから!?お客様と間違えて応接室に入れたの誰よ!?’
 新菜はすかさず申し訳なさそうな顔をする。
 『大変申し訳ございません。弊社には既に契約済みの企業がございます。暑い中いらしてくださったのに申し訳ございません。』
 
 秘書といっても兼務事務。役員のスケジュール管理だけでなく、会社受付や庶務業務もこなしている。実際のところ、新菜は秘書業務しか認めたくないのだが。
‘秘書だけならこんな仕事もないのに。受付も庶務も嫌いじゃないけど・・秘書っていう響きがいいのよね。パーティーでも目立つし。’
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