お姫様だっこ


「お疲れ様でーす」


バイトを終えたあたしは着替えて裏口から出た。


ガチャッ―。


「え?なんで?何してんの!?」


裏口のドアを開けるとそこには…



研が居た。



驚いたあたしは呆然と立ち尽くしていた。


「美優お疲れさん。あのさ、俺も菜帆んち行く事になったから」


「えっ?」


あたしは慌ててバッグから携帯を取り出して菜帆からのメールを見る。


《美優お疲れぇ♪さっき研からメール来てね、菜帆んち来るって!今そっちに居るんでしょ?一緒においでねぇ。2人で消えちゃってもいいよ?♪》




菜帆の奴…調子のいいメールしてきやがって。



携帯と睨めっこしてるあたしに研は近づいてきた。



「行こっか」

「うん」


ドキドキ…。

心臓鳴り止めよ。



隣を歩く研に勇気を出して話しかけた。



「ずっと待っててくれたの?中に入ってれば良かったのに…」


「う〜ん…。サプライズ?なんて。」

ペロッと舌を出して微笑む研。



辞めて、その顔可愛いすぎるから…。



「お前、さっき寂しそうな顔してなかった?気になってさ。待ってた」


えっ?あたし、そんな顔してた?


黙って俯いてるあたしに研は優しく言った。



「独りで抱え込むな?俺はいつでも相談にのるよ?美優の悲しい顔は見たくないなぁ。美優は笑顔がすげぇ似合うのに…」


その言葉を聞いた瞬間、あたしの瞳から暖かい水が溢れ出す。


「…おいっどおした?大丈夫か!?」


泣いてるあたしを見て研は慌ててた。



「ごめ…グスッ。」


必死に涙を堪える。


でも止まらない。



そしてあたしはふわっと暖かいものに包まれた。



目の前にあるのは研の胸。



「おもいっきり泣いていいぞ?我慢すんな」



あったかかった…・。



久しぶりに人の暖かさを感じた。
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