愛されたかった悪女
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会場に戻って来たあの子は動揺しているようで、動揺させたジョンを褒めてあげたい。


そんな事を考えていると、ハヤトが目ざとく入ってきたあの子に気づき近づく。


何か言い合いをしているように見える。


あの子は出口に向かっていた。


長いロングドレスの裾が邪魔で今にも転びそうに見える。


足どりはおぼつかない。


転べばいいのに。


ロングドレス姿が滑稽で、口元に笑みを浮かべてしまう。


そんな楽しい気分が、急に変わった。


ハヤトがあの子を抱き上げたから。


悔しい……堂々と抱き上げられるあの子が憎い。


自分たちの恋愛を振り返っても、公衆の面前で抱き上げられたことは一度もなかった。


癖になりつつある、下唇を噛む行為を止められない。


「エステル、自分を傷つけちゃいけない」


私を見ていたジョンが優しく言う。


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