愛されたかった悪女

ナイフと血

*****


それからハヤトから2週間音沙汰がなかった。


彼に会いたい気持ちが最初の頃より薄れている気がしてきた。


『俺は妻と別れない。例え、別れたとしてもお前と一緒になる事はない いいか?これは本心だ。どんなことがあろうとも俺はお前と結婚しない』


この言葉が私の心を落胆させている。


喉が渇く……。


私はお気に入りのコニャックをグラスになみなみ注ぐと一気に飲み干す。


飲んでも、飲んでも渇きはなくならない。


琥珀色の液体で心の安らぎを求めて、もう一杯グラスに注いだ。


全身が麻痺していく感覚に身を任せて眠りたい……。


心も麻痺させてほしい……。


グッと飲み干すと、手からグラスが絨毯の床に落ちて転がる。


ふらつきながらソファーに倒れ込むと、目を閉じた。


意識が遠のく中、私の脳裏に浮かんだのはハヤトではなくジョンだった……。


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