愛されたかった悪女
「ジョン、うるさいわよ。なにごと――」


私は声を詰まらせた。


ジョンが体当たりするかのように抱きついてきたから。


「ああ……エステル、心配したんだ」


ジョンはホッとしたような声になる。


「……寝ていたのよ」


ジョンから離れると、足元をふらつかせながらソファーに戻る。


ジョンは部屋の中の状態を見て絶句しているみたい。


「エステル!どれだけ飲んだんだ!?」


床に転がったグラス、テーブルの上に転がるコニャックの瓶。


「どれだけって……」


ジョンの言葉にテーブルの上に視線をやる。


空の瓶は1本ではなかった。


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