光の射す方へ
再会
アズサちゃんは何も変わっていなかった。声もほのぼのとした話し方も、私の話は「うん、うん」と2回返事してくれることも。 ただ、アズサちゃんは銀座のホステスになっていた。


アズサちゃんは連絡の取れない間、どん底の生活を続けていた。その中で今の暮らしにありついたのだ。

「今がいいとは思わない。でも公園で寝るよりかはいいかな。ハハハ」

アズサちゃんがおどけて言った。

「アズサちゃん気持ち悪いよ!泣きたい時は泣かなきゃ!」

《ナオありがとー!使わせてもらったよ!》


今は男と一緒に住んでいるらしいが聞くと、とんでもないダメ男だ。ホステスの仕事も好きではないがお金の為に続けている。そんな話だった。

アズサちゃんは電話ごしで泣いていた。きっとこの子は自分を大切にしてくれる人に出会ってこなかったのだろう。


「アヤちゃんは変わったね。充実してるんだね。なんだか私も頑張れる気がするよ!」

私が言うまえにアズサちゃんは言ってくれた。


私達は久し振りに感動の再会を果たした。涙で何が何だかわからない。何度も抱き合い、積もる話をした。


私はつくづく思った。私は周りに恵まれた。顔つきが変わったと気づいてくれた恩師、進学を応援してくれた友達、何でも話を聞いてくれる友達たくさん…

道を外そうとすれば「こっちだよ」って戻してくれる、そんな人達が私の周りにはたくさんいてくれた。

感謝の念が湧いてきて涙が出た。

それと同時に、アズサちゃんにとっての、そのような存在になれずに自分のことばかり考えてた自分に、悔しく、情けなく、申し訳ない気持ちも湧いてきた。

「アヤちゃん!私にも出来るよね?!アズサちゃんにも出来たんだもん、私も昼に働いて、普通になりたい!」

「普通…」

忘れていた。いつか私も「普通」という言葉に捕らわれていた。
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