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「帰れ……」


完全に"表情"というものを無くし、体温まで消してしまった柏原は石の彫刻のようだ。


「あはは、マフラー巻き直して帰りなさい?
私達が今、何してる最中だか……見ればわかるでしょ?」


そう言うと女は、柏原の首に腕を回し
胸に頬を寄せる。





嫌よ――


何?
この感情……



私の柏原に触らないで欲しい……


柏原は私のものなのに……






「『帰れ』と言ったんだ……」



「柏原、嫌よ」


私、拒絶されている?



「帰りなさい、この人はあなたみたいなお子様の相手なんかしないのよ」


見知らぬ女が、私の目の前で柏原の唇を奪おうとする。



綺麗で冷たい唇を……
私は、その唇が本当はあたたかいこと知ってるわ。



「柏原……やめて」


嫌よ……
見たくない……


駆け出して、逃げ出したい。
だけど、ここで帰ってしまったら……


柏原は、私だけのものでなくなっちゃう。




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