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「出ていって! みんな嫌い嫌い! 動物園に売り飛ばしてやるわ!」


部屋にあるガラス製の花器に手をかける。


「お嬢様! おやめください! そのバカラは数千万なさいますよ!」

陽子さんは慌てた様子で、部屋の外に出ていった。


扉に向かって、思いっきり花器を投げつけるとバリーンっ! と予想以上に凄い音がして「ひっ」と肩がすくんだ。


「柏原が帰ってこないのが悪いのよ! あなたが弁償しなさい!」



さすが、バカラの花器。砕け方も豪快だったわ。



扉の前に散乱したバカラの破片は、蕀の道を暗示しているみたいだわ。柏原なら……その扉を開けて私を抱き締めてくれるだろう。



「お嬢様! お怪我はなさいませんか!?」


扉の外からは、陽子さんと寧々さんの慌ただしい声だけが聞こえてきた。



「そこを飛び越えてくる勇気がないのなら……私に柏原を返してよね」

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