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「あら? 竜司……まだなにか?」


そういえば、このコアラ
何しに来たのかしら?

ガックリと肩を落とす竜司は酷く不憫だ。



何か嫌な事でもあったのかしら?


「酷いよ……茉莉果ちゃん。僕のために弾いていたんじゃないの?」

「違うわよ。柏原のために決まってるじゃない」


みるみるうちに、竜司の目に涙がたまる。

あら?

ちょっと可愛いわね。
私は、優しい動物愛護者だから円らな瞳に弱いのよ。


「そんな事よりお嬢様。一つ問題が起こりました」


「そんなことって……僕はメキシコ土産持ってきたのに……」


柏原は、ヴァイオリンケースに丁寧にフックをかけながら難しい顔をする。


柏原が、こんな険しい表情をするなんて珍しい。




「問題って?」


「実は不法侵入者が一名出ましたのは、警備会社の警報器の誤作動が原因でした」

「僕が不法侵入者だって言うのかよ! 僕は、西原家次期当主だぞ! 口を慎め使用人」


竜司は、憤慨したように柏原を怒鳴るけど
執事の冷たい睨みに、ビクッと肩を震わせた。


「竜司、大人気ないわ。すぐ怒るなんて」


カルシウム不足かしら?
ユーカリの葉っぱには、カルシウムがないのね?



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