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ひげ面は、「ブッ」と不細工に吹き出す。
「メイドさんの尻なら喜んで叩くけど。俺達は、男には興味がないんでな! はっはは」
厭らしい顔をしながら笑う。私をバカにしてるのね?
本当に、最低!
あなた許さないからっ!
「兄貴ーっ警備会社のやつ帰ったみたいだよ!」
背の高いひげ面が、バカみたいに嬉しそうな顔して部屋に戻ってきた。
帰っちゃったの?
せっかくお客様がいらしてくれたのに、お茶も出さないなかったなんて知ったら、天国のおばあ様が悲しんでいるだろうに……
だけど、今は手を後ろに縛られているのよ、おばあ様!!
でも柏原なら、後ろ手でも美味しいお茶を用意できるかもしれないわね……言い訳できないわ。
居留守なんて心苦しい。
「残念だったなご当主さんよー、食器一個無駄にしたな? でも、こんだけデカイ屋敷に住んでるなら食器くらいいくらでも買えるだろ?」
勝ち誇ったような、ひげ面にイライラする。柏原は、無表情に押し黙ったままだ。
何か言い返しなさいよ!
もうっ今日の柏原嫌だわ!
「兄貴、この家、デカイだけあって宝石とか高そうな陶器や絵が沢山あるけど持ち運びが大変だよな? 全部持っていく?」
さっきから、姿を消していた四角い顔したひげ面がやってきた。
手には、お母様がコレクションにしている瓶詰めの"サソリの漬け物"を持っていた。
「これが大切に金庫に入ってた」
「こんな気持ち悪いもん売れるか! アホ! 持ちきれるだけバックに詰め込め!」