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悪寒が走る体を無理矢理に落ち着かせ、私は柏原の運転する車に揺られる。
この揺れは全然苦じゃないのよ。
「柏原……」
「いかがなさいましたか? お嬢様……顔色があまりよろしくないようです。屋敷に戻りましたら、すぐに温かい紅茶をご用意いたします」
「そうね。お願い……だけど、あの話はドラマじゃないわ……」
「わかっております」
行きは、灰色のビルの中を抜けてきたのに帰りは違う道を走っているようだ。
右手には、遠くビル郡が見えていて左手には海が見える。
海には、嫌な想い出があるんだ……何故あの記憶を、私は忘れていたんだろう?