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「知りたいのではないのですか? この慰霊碑は、亡骸すらない犠牲者のために船を運行していた企業が建てたものです」
「やめ……てって言ってるのに……」
「貴女のご両親についても調べましたが、家も何も残っておりませんでした。この慰霊碑以外、痕跡がないのですよ」
柏原のバカ……
意地悪……性悪執事……
繋がれていた手を払って、一歩後ずさりして両手で顔を覆った。
目頭がジンジンと熱くなって涙が溢れていく……
何もないんだ……
本物の私には何か残されたものがあるかもって、ちょっと期待していた。
柏原には、山の中に家が残されていたのに、私にはこの慰霊碑だけ。
それを現実として目の前に突きつけられた。
「貴女は、甘えすぎている……」
耳元で囁かれる冷たい声。そして、背後から両手を掴まれる。
覆いを失った視界は開けて、黒い石碑が目に入る。