一番星の愛情物語
そう言って、慧里さまは、足早に母家の方に向かいました。


いろはさまは慧里さまの背中を見送り、色々と探索していました。外れの方でベンチに腰を下ろすと、綺麗な藤が一面に広がっていました。


「綺麗!」


いろはさまはボンヤリ藤を眺めていると、ユックリ眠くなり、その場で眠ってしまわれました。



その頃、ランニングを終えて部屋に戻ろうとした嗣実さまは、藤棚近くのベンチで眠るいろはさまを見つけると、慌てて近寄り、額に触れました。


「……え。嗣実さん?」


いろはさまは、ボンヤリと嗣実さまを見つめました。


「具合はどうですか?」


「具合?特には」


嗣実さまは、ニッコリと微笑みました。


「良かった。こんな所で眠っていたら、風邪を引きます。戻りましょう」


嗣実さまは、手を差し出しました。
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