解ける螺旋
どちらが先か。
私と先生の唇が小さく触れ合った。


啄ばむ様なキスを繰り返して、徐々に深く甘くなっていく。
あの時と同じ射竦められる様な獰猛さの中で、違うのは私に戸惑いが無かった事。
私自身が、先生を求めていた事。


先生は私を好きじゃない。
私には『俺の事が好きなんだ』と言うくせに、多分私が本気にならない様に予防線を張ってる。
それがどうしてかわからない。
どうしてそんな事をするのかもわからない。


健太郎が言っていた通り、本当に先生がこの世界を繰り返しているんだとしたら、私の気持ちを掻き乱してまで求めるものは何なんだろう。


腕を伸ばして先生の首に抱きついた。
酸素を求めて少しだけ唇を離すと、先生はジッと私を見つめていた。


「……先生」

「呼ぶな」


言葉を絡め取る様に、先生は私の唇を吸い上げた。


「せん、せい……?」

「『先生』じゃない。
……俺は、人の先を生きる様な立派な人間じゃない」


――どういう事?


言葉も出せず、ただ苦しそうに揺らぐ瞳を見つめ返す。


「……『愁夜』」

「え?」

「俺の名前」

「……あ」


言われたまま、名前を繰り返そうとして。
結局呼べないまま、私は先生の甘いキスに飲み込まれて行った。
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