解ける螺旋
「え? ……言ったっけ?」


健太郎が何を考えて言っているのかわからないせいか、愁夜さんは困った様に首を傾げた。


「言いましたよ。初めて会った時。
奈月が、先生に会った事がないかって確認したじゃないですか。
あの時、可能性のある家族はいない、妹しかいないからって答えたじゃないですか」


なんだかいつもの健太郎と雰囲気が違う。
昨日私と話して、時空跳躍説を披露してくれた時から、健太郎が愁夜さんをよく思っていないのはわかってる。
私にとって危険な存在だと疑ってるし、私の為に健太郎が色々調べてくれてる事もわかってるけど。
それでも今までの態度とはかけ離れている。


今日の健太郎は愁夜さんに対して目に見えて喧嘩腰だし、敵意丸出し、不機嫌さ全開だった。


「えっと……。結城君、それが何か関係ある?」


研究室に他に学生はいないけど、愁夜さんはいつもの柔らかい態度。
だけど健太郎の様子に警戒してるのは間違いない。


「別に。ただ興味あって。
先生の妹なんだし、きっとすごい美人ですよね?
良かったら紹介してもらえませんか?」

「け、健太郎?」


健太郎の言葉だと思えない。
23年一緒に過ごして来て、女の子を紹介しろなんて言ったのを、私は一度も聞いた事がなかった。


どっちかって言うと興味なさそうだったのに。
さすがにこの年だし、今まで何度か誰かと付き合ってたのは知ってるけど、健太郎からそんな事を言い出すなんて。
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