解ける螺旋
だけど声を出す前に、愁夜さんが冷たく私を見つめた。


「前にも言ったはずだよ。
俺はこの世界で何をしようと罪に問われる事はない。
……君をどれだけ傷付けようと、どれだけ残酷に殺そうと」

「あ……」


意味など聞かなくてもわかる。
愁夜さんはその気になれば、いつでもこの世界を終わらせられる。
今の私に見切りを付けて、他の世界に行ってしまう。


愁夜さんを止められるのは私じゃない。
健太郎の気持ちがどう動くか。
健太郎の気持ちの向く先だけが、愁夜さんの孤独を断ち切る事が出来る。
止まった時間を動かす事が出来る。


それを出来るのは、私じゃない。
どうしたって、私が愁夜さんを止める事は出来ない。


「……」


無力感に唇を噛み締めた。
そして愁夜さんを見つめたままで、一歩ずつ後ろに下がって距離を離す。
愁夜さんは何も言わず、ただ私を見つめていた。
その姿を目に焼き付けて、私は部屋から飛び出した。
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