解ける螺旋
「……はあ。奈月、わかってるだろ。
他の世界で先生が俺達に必要以上の接触を避けたのは、ちゃんと理由があるんだから。
本来なら俺達が樫本先生の記憶を持つ事だって、未来に影響を与えかねない。
だから樫本先生も、最低限の干渉で最大限の成果を得られる様に動いてたんだろ?
戻ったならその方がいいんだ。
どっちにしても、本物の先生がちゃんと存在するこの世界で、先生が居座ってる方がおかしいんだから。
もう忘れろよ。
……大丈夫だよ。知ったからには、俺が奈月を殺させたりしないから」


素っ気なく言う健太郎にはとても言えない。


愁夜さんの望む未来。
それが健太郎の心一つで決まるんだなんて。


健太郎が西谷さんの気持ちを受け止める事が出来なければ、愁夜さんはこの世界を繰り返す事を止めないんだって。
この世界も失敗なら、やっぱり私は殺されるんだろうか。
だって、愁夜さんの未来に私は要らないんだから。
それを言ってしまったら、健太郎はどんな想いをするんだろう。


人の心の向きを変えてしまう事を、簡単に話したり出来る訳ない。
だから言える訳が無い。言うつもりだってないけれど。


――だけど。


逢いたい――


私じゃ何も出来ない、と。
愁夜さんを救う事も止める事も出来ないと痛感して、マンションを飛び出したまま。
あんな中途半端に別れたままで、もう本当に逢えないのかと思ったら、胸が締め付けられそうだった。


次に逢ったら、その時は殺されるかもしれないのに。
それなのに私が、このまま終わらせたくないと思うのはおかしいんだろうか。
このまま本当にもう逢えないなら、この世界の私は見限られたって事。
邪魔な存在だから、と殺されるより悲しい。


愁夜さんにとって意味のない存在でしかない自分を、どうしていいかわからなかった。
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