解ける螺旋
身体が放り出されるような浮遊感。
そしてガツンと頭を殴られた様な衝撃を感じた。
思わず頭を抱えて同時に顔をしかめて、そしてハッとして辺りを見回した。


「……っ!!」


全く見覚えの無い部屋。
どうやら俺は、それ程立派とは言えないソファに寝そべっていたみたいだった。


何度見回しても、ここがどこだかわからない。
それを自分で確認して、焦りとも不安とも説明出来ない、何とも言えない思いに心が揺れた。


――これまでには見た事のない世界。


何度も過去を弄って、そして自分の本来の世界に戻って来た。
その度に俺の世界は改変されて、戻る環境も変わってはいたけれど、いつもどの世界でも真美の死を知る事になった。
そしていつも小型の座標計算機は俺の手元にあった。
それはつまり、28歳の俺には、どの世界でもそれが必要だって事だ。


今までの失敗だらけの跳躍では、俺が真美を救う事が出来なかった。
結局俺はいつも、この計算機を作り出さなきゃいけない運命にあった。
だから何度も同じ世界を繰り返した。


だけど。
もしかしたら、と期待が過ぎる。


今の俺は、全く記憶に無い部屋にいる。
今までに見た事のない世界にいる。
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