解ける螺旋
いつもの様に何かを研究している自分だったらいい。


いや、だけど多分違う。
真美が生きているうちは、俺はずっと医者を目指して勉強していた。
それなりに臨床実習も経験した記憶はあるけれど。
俺の予想が当たっていれば、かなり嫌な汗を掻きそうな予感。


――まさかとは思うけど、もしかして今の俺は医者か?


しかも更にマズい事に、見た所、時間は夜中。
雑然とした狭い部屋。
テーブルの上のすっかり冷めたコーヒー。
この部屋の状況から考えると、俺は仮眠をとっていた様にしか思えない。


自分の研究で深夜まで残っていたならまだ救われる。
まさか、と思いたいけど。


当直医だったりしたら、医者の経験などない俺じゃ対処の仕様がない。
そう考えて久々に本気で慌てた。


繰り返す世界の中で、俺は真美の死を確認した後はいつも、その先の未来には進まずに過去に戻っていた。
今までは、これから先の時間に進む心配をした事は無かったから。


医学部時代の経験の記憶しかない俺が、このまま医者として生きて行くなんて、ハードル高過ぎだと焦る。
せめてもう一度過去をやり直して、どこかで医学の知識も叩き込んでおかない事には危険過ぎる。


なのに俺の手元から座標計算機消え去った。
作ろうと思えば頭が覚えてる分可能だけど、いつ完成するかを考えたら気が遠くなった。
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