解ける螺旋
少なくとも、真美が理不尽に命を落とす事はもうないだろう。
だから俺の願いは叶った。
これ以上を望む事はない。


なのにどうして。


イライラしながら白衣を脱いで、俺は更衣室で着替えを済ませた。
肩を揺らして大きく溜め息をついて、どうして、と思う自分にもイライラする。


――そんな理由、わかってるじゃないか。


ほんの数時間前のことだ。
最後に会った奈月は、絶対に俺を見つけ出すと言った。


今度こそ、好きだと言わせてみせるとも。
あんな不敵な事を言ってのけたくせに、たったの数時間で奈月は結城の元に戻ったと知れば、俺だって……。


いや、わかってる。
ほんの数時間前って言うのは俺の主観でしかない。


実際にはこの世界に、あれから五年の年月が過ぎ去っている。
この五年間をほんの数時間前なんて言えるのは、この世界で俺独りだけなんだから。


だけど。
当たり前だと納得しながら、イライラする気持ちが抑えられない。


どこにいるかもわからないと思っていたけど。
戻ってみれば俺は捜さなければならない程、奈月から遠い場所に居る訳じゃないはずなのに。
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