解ける螺旋
ピロートークで奈月はあの後の世界を語ってくれた。


俺は無事に医師免許を取得。
研修を終えた後、当時付き合っていた彼女と別れてアメリカに留学した。
留学と言っても、もう医者になった身分だから、アメリカの病院に勤務しながら研修を受けたという様な感じなんだろう。
そして半年前に帰国してから、あの大学病院で心臓外科のホープとして腕を奮っているらしい。


自分でホープなんて言うのもどうかと思うけれど、医学誌なんかでは俺の論文や記事がかなり載せられているらしい。
手術も予約で一年先までスケジュールが一杯だと言うから、それなりに期待されている証拠なんだろう。


奈月が俺の帰国と勤務先を知る事が出来たのも、医学界だけじゃなく一般レベルでも俺の名前が取り沙汰されたからだと言う。


真美が結城と付き合っているなら、そのあたりにも情報源はありそうだと思ったけれど。
俺は奈月の話に耳を傾けるだけだった。


真美が結城に告白したのは、俺が未来に戻る前だと言う。
だけど結城は俺の事が引っ掛かったままで、俺の妹の真美の気持ちに返事が出来なかったらしい。


二人が取り組んでいた学会が終わって。
俺が自分の世界に戻ってからしばらくして、結城は真美と付き合い始めたという事だった。
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