解ける螺旋
ギブアップ。
悪足掻きは無駄だ。
俺は見上げて来る奈月に、小さく両手を上げて降参のポーズをとった。


それを見て奈月はニッコリ笑うと、軽く背伸びをして俺にキスを仕掛けて来る。
チュッと軽いリップ音を残して、奈月の唇は直ぐに離れた。


「決定! 夕食の後にでも健太郎を呼び出します。
場所はここでもいいですよね?
……あ。あのね、愁夜さんが眠ってる間に買い物行って、夕食の支度したんですよ。
味は結構自信あるんだけど……。
食べてくれますよね?」


はにかむ様に笑って、奈月は俺から身を引いてキッチンに駆け込んで行く。


――だから俺の隣にいなかったのか。


そんな事を思い出しながら、はしゃいでいる奈月の背中に俺もつい苦笑を漏らした。
真美の話にならなければ結構いい雰囲気だったのに、どうしてこんな事になったんだか。
俺は唇に残った奈月のキスの感触を指でなぞってから、小さく溜め息をついた。


あんな軽いキスじゃ、却って落ち着かない。
今すぐ奈月の肌に触れたい衝動すら込み上げて来るのに。


――どうもこの未来では俺の分が悪過ぎる。


完全に奈月に押されまくってる事に当惑してるのに、何故か。
それはそれで意外に楽しい。
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