解ける螺旋
いきなり耳に届いたつんざく様な轟音。


それに気付いた時は既に、私は健太郎に抱きかかえられて、視界が一回転していた。
身体に衝撃が走って、鈍い痛みを鋭く感じた時、耳元で健太郎がチッと舌打ちするのが聞こえた。


「……おい!! ちょっと待て!!」


轟音は遠ざかって行くのに、健太郎はすぐに立ち上がってその後を追おうとする。
少しだけ身体を起こすと、視界に小さくなって行くバイクの姿が映った。


「……なんなんだよ……!!」

「待って、健太郎!!」


走り出し掛けていた健太郎の腕を慌てて止めた。
私に気を取られた健太郎は動きを止めて、その間にバイクはもう見えなくなる。


――また。


そう感じて、一瞬身体を震わせた。


こんな危険な目に遭うのはこれで何度目だろう。
ある意味何度も遭っていたせいか、怖いと思う気持ちも麻痺していたのかもしれない。
そんな事を考えた私は怖い位冷静で、大きく息をついた後、健太郎の手を離した。


「……ありがとう。私は大丈夫だから」


そう言って、無理矢理笑顔を浮かべた。


本当は意味がわからなくてすごくドキドキしてるのに、健太郎に心配を掛けてはいけない気がして、私は平静を繕っていた。


こんな事は何度もあった。
そしてその度に健太郎がいつも助けてくれた。
私はまた健太郎に助けてもらった事に安堵して、ゆっくりと立ち上がって。
微妙に揺れる健太郎の瞳の光に首を傾げた。
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