解ける螺旋
「うるさいな。
……奈月は過去に戻って何を知りたいんだよ」


『知りたい』と言われた時点で既に、健太郎が何を考えているかがわかる。


「……『あの人』が助けてくれなかったら、私がどうしてるか」


そう言った私の言葉に、健太郎は表情を曇らせた。
それだけで私の勘が間違っていなかった事はよくわかった。


「……縁起でもない」


やっぱりそうか、と、自分の事なのに苦笑してしまうのは、私自身もそう思っていたからなのかもしれない。


「ねえ。やっぱりそうなのかな。
『あの人』に助けられなかったら、私は殺されてたのかな」


健太郎が嫌がる話題だとわかっていながら、つい身を乗り出してしまう。


「バカ。そういう『もしも』は考えるな」


案の定、健太郎は眉をひそめて私から目を逸らした。


「でも健太郎。『もしも』なんだから怖くないでしょ。
実際に私はちゃんと生きてここに居る。
だからこれは、可能性の話でしかないじゃない」


私の言葉に健太郎は難しい顔をしたまま、しばらく黙り込んだ後、大きく溜め息をついた。


「『もしも』って言うか……お前は知りたいだけじゃないの?
あの時こっちで何があったか」
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