解ける螺旋
私が何と証言しようと、警察が『あの人』を犯人側の人間だと疑いを向け続けた理由。
『あの人』からのメッセ―ジなのは間違いないけれど、確かに犯人の要求に結び付く状況が多いと言えば多い。


あの時は公開捜査は行われず、極秘で報道規制が敷かれていた状況だった。
なのに、私を身代金要求場所に指定された川の近くに連れて行ったところとか、偶然にしても不自然だとは思える。


『あの人』に助け出されなければ、身代金の受渡しが行われて私は救出されたかもしれないし、失敗して殺された事だって考えられる。
そう考えたら、私が今生きているのは限りなく幸運に近い『運』でしかなくて。

――そう、殺されていたかもしれないんだ。


やっぱり『あの人』のおかげなんだと思う。
そう思うと、一層わからない。
誘拐事件の後、あの研究に打ち込んだ両親の『足枷」
それが健太郎の話でも明確な物は掴めなかった。


「……健太郎はさ、『あの人』はやっぱり犯人側の人だって思ってる?」


だから私は、私が自分でも不安になっていた事を口に出す。
その質問に、健太郎はいや、と短く答えた。


「思ってない。……と言うか、どっちでもいい。
奈月を助け出してここに戻してくれた人なんだから。
実際見つかってないし犯人も捕まってない。
だったらいいじゃないか。
奈月が思ってる通り、よくわからない人物だけど、あの頃からずっと、お前の『ヒーロー』なんだから。
そう思って生きて行けばいいんだ」


真面目な顔でそう言う健太郎に、私は素直にうん、と頷いていた。


今が変わらないなら、過去を知らなくてもいい。
そう言った健太郎が、やっぱり私を気遣ってくれてるとわかったから、それ以上は聞けずに黙った。
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