絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
「ん……」
 ベッドに背中から倒れていく。
 ゆっくり。
 まるで、患者を寝かせるように。
「なんか、患者さんみたい(笑)」
 雰囲気も台無しに、笑ってしまう。
「どんな病気の?」
「……大好きで仕方ない病気……」
 恥ずかしいと思いながら、言い切って、ぎゅっと白いシャツにしがみつく。
「恥ずかしいなら言うな」
 バレバレだ。
「だって。言わないと、分からないし……」
「そんな病気はない」
「そう、だけど……。ねぇ、キス、して?」
 キスは何度かした。だけど、セックスはまだ……片手で数えられるほど。
「……」
 榊は無言で、優しく唇に軽く触れる。
「……して……」
 と、言わないとダメなのだ。多分、こちらが未成年なのを気にしているからだとは思うが、少し痛々しかった。
「今日はやめよう」
「どうして?」
 香月は間髪入れずに質問する。
「そんな頻繁にするもんじゃない」
 最後に会ったのが2日前だったことを思い出す。
「何で?」
「理由はない」
「なんでー?」
「これで……我慢な……」
 榊は分かってないんだ。
 そうか、わざとそういう風に仕向けているか。
 だって、優しくて、ちゃんとツボをついたキスを、深いキスをしてくるんだもの。
 ずるいのか、天然なのか……。
 ベッドで刺激に疼く香月は、外に出る準備をする榊をぼんやりと眺めているだけだった。
 もう少し大人になったら……。
 大人になったら、大人扱いしてくれると思っていた。
 もう少し待っていてくれるはずだったのに……。
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