絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

まさかの勤務地移動

「ほんと、めっちゃかっこいいですよねー」
「どうですか、永作さん?」
「……悪くはないです」
 本日はいつもと少し違った3人で、スタッフルームで昼食をとりながら、一体何を評価しているのか……。
 佐伯はまん丸の目を更に大きくさせて、
「私が知り合った中で、エレクトロニクスの中で一番だと思います!」
「……うーん」
 香月はフル回転させながら過去を検索するが、永作はそれを待たずに
「一番格好良い人は他にもいます……」
 と、小さく発言した。
「えー!?!?」
 2人は周囲も構わず声を上げた。
「どっどっど……」
 香月は動揺を隠せない。
「香月先輩落ち着いて!!」
 佐伯はそれを助けるように、肩を押さえて来る。
「どっどっどこに!?!?」
「落ち着いて、落ち着いて(笑)」
 つい立ち上がってしまったのを、座るように促してくる。 
「だって、どこに他に格好いい人がいるの!?!?」
「そんな私に怒られても……」
「どんな人、どんな人!?」
 香月は珍しく身を乗り出して永作に顔を寄せた。
「真籐さんより格好いい人は他にいるかなって意味です」
 永作は少し照れながらも応える。
「例えば!?」
香月の興奮は冷め遣らない。
「たっ、たとえば……依田さん、とか言うんじゃない!?!?」
「んなことあるわけないじゃないですかー!」
 佐伯は笑いを通り越して怒りを素直に表した。
「いや(笑)、だってさあ……。なんとなく、一番確率低いところから攻めようと思って」
「高いところからにしてください!!」
「じゃあ高いってどこ??」
「うーん、一般的に……うーん……」
「この店舗の中だと、多分一番人気あるのは西野さんなんじゃないかなぁ……」
 香月はある程度の確信をもって答えた。
「え゛、そんな話聞いたことないですよ?」
「え、そう? 何回か聞いたことあるからそうなのかとてっきり」
「それだったら、数の多さだったら。普通に格好いいとかいい感じっていうのだったら、圧倒的に矢伊豆副店長じゃないですか?」
「うーん、あれはなんか数には数えないような……」
「ひどい(笑)」
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