優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成と一緒に寝るのは慣れていたが…


右も左も男。

どっちを向いて寝たらいいのかわからない。

…部屋は静かになり、桃は幸村側に寝返りを打った。


幸村の目は閉じていて、しばらくその寝顔を観察した。

――桃の世界では幸村は大層人気があり、ゲームの主役にもなったりで親しみのある男なのだが…今はすやすやと寝ていて、少し可愛い。

そして今度は逆に寝返りを打つと、政宗は眼帯をつけたまま寝ていた。


“正室にしか見せるつもりはない”


そう言っていたので、人前で眼帯を取るつもりは毛頭ないのだろう。

…みんな眠っている。

一人で眠るのではなく、皆と寝ているという安心感でだんだんうとうとして、深い眠りについた。


――ぱさり。

何か音がして、桃は目を開けた。


まだ夜明け前で外も暗く、音の下方向を見るとそこには障子を開けて外を見ている謙信の姿が在った。


暗闇でもはっきりとわかる、その凛とした佇まい。


手には刀が握られていて、少しそうして外を見つめると、そっと部屋を出て行く。


「…謙信さん?」


気になって後を追った。


最初は緊張して眠れなかったが、謙信がつけている香の匂いが心地よく、こんなにぐっすり眠れたのは謙信のおかげといってもいい。


「謙信さん?」


「あれ。桃姫?」


そこには、縁側で座禅を組んで不思議そうな顔をして見上げている謙信が居た。


「謙信さん、まだ朝じゃないよ?何してるの?」


「私は眠りが浅いんだ。それにこうして陽が徐々に上ってくるのを見るのが好きでね。姫はまだ寝ているといいよ」


「もう目が覚めちゃった。謙信さんのおかげで三成さんと仲直りできたの。ありがと」


「余計なことしちゃったかな、私には得はないけれど、義は通さないとね」


隣に座るとまたふわりと香が香ってきて、思わず深呼吸した。

それに気づいた謙信が浴衣の胸元を捲ると、すんと鼻を鳴らす。


「そんなに香ってる?」


「えっ!あ、う、ううん…」


はだけた胸元からよく鍛えられた白い肌が見えた。


片膝を立ててリラックスしているその姿がとてつもなく、セクシーだった。
< 177 / 671 >

この作品をシェア

pagetop