優しい手①~戦国:石田三成~【完】
ずりずりと後ずさるが、あっという間に距離を詰められて、右も左も壁に手をついて逃げ場を塞がれる。


このままでは間違いなくヴァージンを奪われてしまう…


――謙信は初恋の男だが、それにも増して三成の存在感が大きすぎる桃は言い訳を始めた。


「私っ、今すっごく汗かいてるし!」


「今からもっと汗が出ることをするんだし、平気だよ」


鎖骨にキスをされてまた声を上げそうになり、迫り来る謙信の肩を押して距離を取る。


「あとあと…っ、えと、そうだ、あとそろそろ生理になるしっ!」


「生理?ああ、女子特有のやつだね。じゃあもう来ないようにしてあげるよ。ほら、力を抜いて」


焦りもなく余裕に見えていて、そして近付いてくる唇に桃のパニックも止まらなくなり、ぎゅっと目を閉じると最後と言わんばかりに悲鳴のような声を上げた


「もう三成さんたち帰って来ちゃうしっ、こんなとこ見られたら殺されちゃうよっ!」


その一言で唇がもう触れ合う寸前で謙信を止めることができた。


だがその少し垂れた穏やかな瞳には、相変わらず焦りの色もなく少しだけ首を傾げると、軽く唇にキスをしてきた。


「確かに裸のまま殺されるのは締まらないよね。でも姫、男には雄を止められない瞬間もあるんだよ。もう覚悟して」


「ん…っ」


荒々しく唇が重なり、身体の芯から燃え上がるような熱にさらされて、脚をばたつかせてもがこうとした時…

謙信が耳元で囁いた。


「しー、しばらく大人しくしていて」


「え…?」


「見られてる。いい子だからこのまま…」


――気が付けば視点が天井になり、次の瞬間には謙信が見下ろしていて、押し倒されたのだとその時ようやくわかった。


「私をこんなに夢中にさせるなんて、本当に姫は悪い子だ。天女とはそういうものなの?ほら、悪さをするよ」


耳の中に舌が入ってくる。

声もなくのけぞった桃のセーラー服の中に謙信の手が潜り込んだ。

声を上げようにもその時謙信と目が合って、その目がとても冷えていることに気が付いて、抵抗をやめる。


「そう、いい子だね…」


誰かが見ている。


謙信は、わざとこの光景を見せているのだ。
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