優しい手①~戦国:石田三成~【完】
秀吉と茶々はとうの昔に尾張へ出発してしまったので、桃は謙信と三成に手伝ってもらいながら手紙を書くと飛脚に持たせた。


「秀吉さんは偉い人だし、やっぱり祝言には参加してもらえないよね…」


「仕方ないだろうねえ、ここまで来てくださったのも大変なご苦労をされただろうし。もしかしたら引き返して下さるかもしれないから気落ちせずのんびりしようよ」


「のんびりっていっても…最近毎日採寸とかお化粧とか付け髪とか色々されて私は大変なんだけど!」


「だって君は一応天下一になった私の正室になるんだもの。誰が見ても“美しい”って言ってもらえるようにしないとね。祝言の日だけでいいから我慢してほしいな」


ようやく女中連中から解放されて自室でごろごろしていると、何やかんやと言い訳をして逃げてきた謙信も桃の隣に寝そべって腰を抱いてきた。


「君の月のものが終わって、君はもうすぐ私の正室になるわけだけれど…駄目なの?」


「駄目って…何を聴いてるのっ?!」


「君が考えてることだよ」


耳元でこそりと囁いた低い声は艶やかで、耳が弱点の桃は身をくねらせると顔を近付けてくる謙信の胸を押した。


「だ、駄目駄目!もおっ、すぐ謙信さんしたがるんだから!」


「三成は違うの?私に黙っているだけで三成と色々してるんでしょ?別に悔しくないけどね」


“悔しくない”と言いつつも頬はやや膨れていて、桃が少し焦っていると謙信は桃の耳に熱い息を吹きかけた。


「や…っ、だ、だめ…!」


「君は今後私たちから代わる代わる抱かれて、私たちの子を生む。私たちが父となって、子宝に恵まれるんだ。月のものが来る暇なんてあるのかな?」


「謙信さ…、あぁ…」


逆らえない優しい手がするりと胸元に入ってきて、言葉を封じ込めるように唇が重なってきた。


祝言はもう明日だ。


その夜のことを考えると身体が熱くなってきたが、公平を期すために唇が離れた一瞬の隙に身体を起こして謙信から離れると胸元を正した。


「…明日ね。明日まで待って。ぴかぴかにしてすごく綺麗になって…それからね」


「お預けをさせるわけだね?君は相変わらず焦らし上手だなあ。いいよ、想像して楽しむから」


「謙信さんのエッチ!」


――明日が待ち遠しい。
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