雨と傘と
彼女の髪からいい香りがする。そっと息を吸い込んで耳元に唇を寄せる。

そのまま耳に唇を這わせると、彼女は一瞬びくっとしたが、彼女を抱きしめる腕に力を込め、逃がさない。隙間なく密着する身体と、心。



一度火が付いた心は止まらなかった。


艶やかな髪を片手で掻きあげ、耳から首筋に唇を滑らせる。

ああ。こんなにも。
幸葉に触れたかったのか。


彼女の肌はなめらかで、引きつけられて…気持ちいい…

鎖骨をなぞり、また首筋へ。耳から輪郭を彷徨い、顎へ。


そして、唇に。

何度もやさしく、何度も何度も。


キスをした。



少しずつ開いていく唇へ熱い吐息を流し込む。静かに深く、深く唇を合わせていく。



愛おしくて堪らない。




彼女の呼吸は荒くなり、漏れる吐息が俺の中を満たしていく。その細い腰を抱き寄せ、片手を頭に添えて、激しく彼女を求めた。お互いの熱した想いを漏らさないように、隙間を埋める。


柔らかな唇の隙間から舌を入れ、彼女の舌を捕える。


深く。浅く。

弱く。強く。

繊細に。大胆に。


不規則に繰り返す、
甘い甘い、口づけを。
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