契約恋愛~思い出に溺れて~

痛みの果てに



 「ママ、なんかヒドイ顔だよぉ」

私の顔を覗きこむ紗優の、丸く開いた口が見える。

ようやく寝れたと思ったら、もう起こされてしまった。


「紗優、おはよう」

「今日は2人ともお寝坊だね」

「え?」


ベッドの下を見れば、英治くんもタオルケットにくるまったまま、まだ眠そうに目をこすっている。

何だか気まずくて、ずっと見てていいものか分からない。
とにかく朝食でも作ろうかと起き上がると、途端に頭の痛みが増した。


「……っ」

「どうしたの?」

「ちょっと頭が」

「大丈夫?」


私の声を聞いて、心配そうにこちらを向いた彼は
目が合うとやはり気まずそうに一瞬そらした。
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