契約恋愛~思い出に溺れて~


「お帰り、紗彩」


2階から母が降りてくる。紗優を寝かしつけていてくれたのだろう。


「ただいま。遅くなってごめんなさい」

「いいけど。さっきの車……」


もしかして見られた?

ドキドキしながら、母の次の言葉を待つ。


「付き合ってる人がいるなら言いなさいよ?」


予想通りの反応に、口に唾が溜まった。
ゆっくり飲みこんで平気な顔を作る。


「そういうのじゃないの」

「いいんだよ、隠さなくたって。いつか連れてらっしゃい」

「ホントに、違うんだってば」

「紗優だってお父さん欲しいだろうに」

「お母さん……」


それを言われれば胸が痛い。

自分は、割り切って慰めてもらっているくせに。
紗優にはユウを忘れないでほしいと願っている。
< 74 / 544 >

この作品をシェア

pagetop