僕は生徒に恋をした
目は逸らしてしまったものの、平静を装って声を掛ける。

「どうしたんだ?」

「転んで膝を擦りむいちゃったから、絆創膏もらおうと思って」

山田はそう言って自分の膝を指差す。

なるほど膝には少し血が滲んでいた。

「先生こそどうしたの?」

山田は慣れた様子で引き出しの中から絆創膏を出しながら言った。

「胃薬を探してたんだけど見つからなくて」

「私分かるよ。
怪我ばっかりで、ここ常連だから」

山田はそう言って笑うと、棚の上方の引き戸を開けようと手を伸ばす。

彼女の身長では届かなそうに見え、俺は近づいた。

山田の後ろから引き戸に手を掛け、中から胃薬のビンを取り出した。
< 22 / 374 >

この作品をシェア

pagetop